歩き回る虎

なんだかんだ10年近くはてなを愛用する村人です。アニメや漫画やゲーム等のオタク系レビュー、投資日記、世の中のこと、ツイッターで書ききれないこと等を書き連ねる雑記ブログです。

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【レビュー】『劇場版シティーハンター』、ぶっちゃけ香への愛が薄すぎね? 愛よ消えないで (槇村香さんお誕生日おめでとうございます)

 

 

 

 

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   前回のシティーハンターレビュー続きです。ネタバレがっつりです。

 

   香ちゃんのお誕生日が3月31日なのでなんとかそれに間に合わせて公開したかった次第。改めて槇村香さんお誕生日おめでとうございます。

 

 以下本文。

 

 

     ☆5つが最高評価だとして、ざっくり以下の評価になりました。(個人の感想です)

 

OP・ED・挿入歌の演出度 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
アクション度 ☆☆☆☆☆
オシャレ度 ☆☆☆☆
ストーリー構成 ☆☆
獠と香のラブ度 ☆

総合 ☆4.0

 

 「OP・ED挿入歌演出 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆」について。

 本作最大のファンサービスは間違いなくこれでしょう! OPからPSY・Sの「Angel Night〜天使のいる場所〜」で初っ端からオールドファンのテンションを最高潮に盛り上げた後、「1~3」を彩る全ての名曲OP・EDを豪華にぶっこんでくれる心意気にTVアニメ版のファンとしてもう感涙するしかありません! 

 


[City Hunter OAS Vol.2] Footsteps [HD]

 

 主題歌だけではなく最高にオシャレで小粋な戦闘曲「FOOTSTEPS」をはじめ、「MIDNIGHT LIGHTNING」等の名BGMや長期のシリーズで2回しか使われなかった挿入歌まで惜しみなく再現してくれてます。特に「FOOTSTEPS」は嬉しかったなぁ。

 

 極めつけはTVシリーズの名エピソード集を今の作画でダイジェストさせながら流す、実写背景の「Get Wild」「STILL LOVE HER (失われた風景)」! ヤバイです。こだま監督は完全にオールドファンを泣き殺しにきてますよ!! 一番見たいと思っていたものがまさか2019年に蘇るとは思いませんでした。ありがとう、ありがとう。

 

 今回コラボ出演した「キャッツアイ」OPについては、アニメの制作会社が違うのでさすがにそのまま使用とはいきませんでしたが英語アレンジでなんとか食い込ませてくれた点も好感です。

 

  「アクション度 ☆☆☆☆☆」 

 本作はガルパン等のミリタリ考証を担当されたプロの金子賢一氏が参加しているだけあって、敵味方共に銃器の描写がマニアックかつカッコいいです。

 

 その金子氏の「アニメでお馴染みの獠のスナップロードアクションは、銃を痛めつけて精度を鈍らせる行為なのであえてNGにした」というツイートが一部で賛否両論となりましたが、そのNG分を補って余りある新たなガンアクションがあり原作で人気のあったアクションの数々(武器を持つ相手にパチンコ玉を弾いて応戦、ハンドガンを脇越しに構えて背後の敵を撃つ、敵が構えた銃口に神業的ワンホールショットなど)を総決算的に再現されているので全く気になりませんでした。

 

 特にクライマックスで獠が銃身を短く切り詰めた改造ショットガンで片手でクルンと銃を回すスピンコックリロードをしながら敵ドローンを次々撃破してくシーンは超絶にカッコ良すぎてしびれました。ターミネーターで有名なアクションですね。

 

 私はミリタリ詳しくありませんがちょっとしたリロードや構えの所作や、カバーアクションは旧アニメシリーズよりも格段に「プロの戦闘屋」としての説得力を感じましたし、その点だけならもしかしたら過去シリーズ最高の完成度に仕上がっているかも知れません。

 あとプロ対プロの戦闘描写を重視した故なのかも知れませんが、今作は海坊主のパートナーにして作中最強クラスの女傭兵・美樹さんのバトル活躍度が非常に高かったのも個人的に嬉しかったです。飛んで跳ねて敵の攻撃をかいくぐりながら最新銃器をぶっ放してファルコンともしっかりイチャイチャする美樹さんは最高に素敵でした。

 

  「オシャレ度 ☆☆☆☆」

 シティーハンターという作品はガンアクションヒーロー描写のみに非ず。原作・アニメ共通のキャッチコピーは「都会を駆けるオシャレなハンター」といったもので、バブル期の華やかな都会生活への憧れをあらゆる演出で表現しています。

 主題歌も都市感や大人の男女が醸す雰囲気を意識したチョイスです。イルミネーション真下に見下ろし夜を登ってくエスカレーターです。他にも例えばアニメの香の服装は当時の最先端ファッションをあてがうべく毎話専用のコーディネーターが居たとの事ですし、獠が依頼の隙間を縫って依頼人を新宿の素敵なデートスポットに連れていってくれます。思えば獠ちゃんのヘラヘラしたナンパ野郎ぶりも都会を象徴するイメージの一つなのかも知れません。

 そうした要素の一つ一つが新宿で派手に銃ぶっ放してドンパチする冴羽獠という男を、血生臭い修羅でも泥臭いヤクザでもない若者に馴染む洗練されたヒーロー像に演出してくれていました。

 バブル時代が終わり情報化社会で都会への印象は様変わりしたとしても、時を経てもなお残る「キラキラした都会の雰囲気」。それも作品を再現するうえで欠かせない大事な要素です。

  

  では、『劇場版シティーハンター』のキラキラした都会度はどうだったのか。

 新宿歌舞伎町のTOHOシネマズのゴジラに火を噴かせるオープニングを皮切りに、夜の大人のスポットも押さえた小粋なロケーションが続々と出てきます。悩みを抱えた依頼人を新宿の綺麗な夜景を一望できる秘密の場所に誘って心を解きほぐすという原作エピソードも再現されています。香の服装も場面ごとに多くのバリエーションを見せててファッションへのこだわりも健在です。

 

 減らした☆ひとつ分は、獠達のマンションの外装と内装のオシャレ感が無くなっちゃった点です。アニメ版はあのレンガ造りのマンションが好きでしたし、内装もバブル期らしいいろいろオシャレなインテリアがあって住みたくなるような雰囲気でしたが、今作は広くなった代わりにモノが全然無くてシンプルな部屋でしたね。

 

 「ストーリー構成 ☆☆」

   これはファン目線でも大味な印象は否めません。おそらくキャッツアイ三姉妹を急遽本編にねじ込んだ弊害で、本来あった伏線のいくつかが未消化のまま取り残された感があります。例えば敵組織からキャッツアイに寄越された最新AI会話型ロボット・海小坊主くん。海坊主が「海小坊主は本職の軍事兵器寄りの仕様なので、傭兵仲間に探りを入れた」とありますが、明らかに自爆装置なり監視システムなり搭載されてた流れでしたよね。でもウヤムヤで海小坊主の仕様については結局なかったことに。あとこれは憶測ですが、獠がノゾキに使用したドローン(エローン)にも後半の敵ドローン戦でなんらかの見せ場が用意されてたのではないかなぁと。

 

 ていうかキャッツアイの皆さんは何しにレオタードにまで着替えて敵陣に乗り込んだのさ! まさか香を運ぶついでに本当に店を破壊された恨みで犯人一味をドツきに来ただけー!? お祭り企画に突っ込んでも詮無きことかも知れませんが、もっと参戦にわかりやすい意味を持たせても良かったんじゃないでしょうか。なんやかんやで停電させて、その一瞬の隙を付いて獠が窮地を脱するとか。そりゃオールドファンは参戦だけでも満足かも知れませんけど、あれじゃ「キャッツ何しに来たの??」と客を困惑させちゃうリスクの方が高いような。

 

 またラスボスの御国はイジメられ時代や香への執着を示す感傷的なモノローグが多い割に、彼の「新宿ウォーフェア化計画」とそのターゲットに冴羽獠を選んだ動機背景が判り難いです。いや、まったく理解不能な訳ではなく「子供の頃の黒歴史抹消ついでに、治安が悪くトラブルが多発する新宿を人為的に更なる修羅の国に変えて武器を売ろう。しかし、そのために新宿を護る守護者としても住民に慕われている冴羽獠が障害になるので消してしまえ。各国の武器商人に己の武力を示し、ついでに香を心変わりさせてモノにするチャンス」という訳ですよね。ただ、それを観客にリアルタイムで直感的に把握させるために、彼の無駄に多いセリフの中に適切な言葉選びで情報を小分けにして伝える事ができた気がします。御国は不必要な程セリフが多い割に、それを有効活用できてない。必要な設定を伝えるにも、感情移入させるための人物描写としても足りないかなぁと。

 

 素朴なツッコミ所としては、依頼人のアイちゃんは事件の前からモデルとして成功しており、御国は最初から立場を利用してたやすく接触する事が出来たわけですよね。だったらいちいちPMCまで使って何度も襲撃させるのは無意味に近い悪手で。初手、モデル仕事の打ち合わせがあるとか適当な大義名分で呼び出してさらうのが一番効率的だったんじゃないでしょうか。ていうか世界の戦争史を一変しうる殺戮兵器の開発をたった1人の研究者に丸投げしてバックアップの1つも取らなかったというのは世界的な武器開発販売企業としてどうなのよ? 話が厨ニチックで壮大な割に雑い雑い。

 

 あと個人的な感慨ですが、冴羽獠と香を取り合うイケメンラスボスというからには、シリーズファンとして獠に匹敵するカリスマ性が欲しいところでしたが、今作のラスボス御国は過去シリーズの中でも際立って小物です。山寺宏一さんの演技の迫力にだいぶ助けられましたね。

 

 「獠と香のラブ度 ☆」

  本作最大の不満点はこれ!! 

 設定上の展開は「香と幼馴染で親しかったイケメンが香にパートナーになってくれとアプローチ。香の存在をめぐって獠を激突する」という、獠と香のラブロマンス展開にキュンキュンしてた読者にとってこの上ないシチュエーションのはずなのに、実は香が空気で、御国と獠の中の香への想いもほぼほぼ描写されてないためにラブ面ではビタイチ盛り上がりませんでした。たぶん、制作陣一同にとって獠と香のじれったいラブ、というか香自身に対する優先度が相当低いのではないかと邪推しそうになってしまいます。

 

 ウェディングドレスのくだりとラストのセリフも唐突で取ってつけたような印象しかありませんでした。しいて理由をあげるなら「エンジェル・ハート」時空でウェディングドレスを着られないまま天国に召されてしまった香の未練を「シティーハンター」時空の香に叶えさせてあげたという原作者目線のフォローといった感じでしょうか。ただ、作画的には化粧してウェディングドレスを着た香よりもどう見ても普段の香の方が美人さんだから困る。せめてモデルの都合とか合成とかで隣にタキシード姿の獠も並ばせられたらその美しさももっと違って見えるんでしょうが。話がそれました。

 

 例えば、原作では依頼人を警護するために自宅マンションにしばらく泊める展開になりますが獠のスケベぶりを知った依頼人は当然の疑問を持ちます。

 

「何故一般的には美人でナイスバディな香が尋常じゃない女好きの獠からアウトオブ眼中扱いされてるのか」

「敵の銃撃を超人的身体能力でかわす獠がなぜ香の100tハンマーを避けられないのか」

「そもそも一つ屋根の下で一緒に暮らす獠と香はどんな関係?夫婦なの?」

 

 その疑問を獠か香のいずれかにぶつけて二人が動揺して苦しく言い繕ったところで初めて、「あーこの二人って“そういう関係”なんだ(・∀・)ニヤニヤ」と察するのが定番の流れなんですね。このようなやり取りが欠片もあれば「そうそう、シティーハンターってこれだよなぁ///」と当時のドキドキワクワクが蘇ったというものです。

 

  ところが本作にはそうした見ている方もこっ恥ずかしくなるやり取りが一シーン一セリフたりとも存在せず、そもそも二人の会話や二人が共に行動する機会そのものが極端に少ないんです。

 原作コミックスやアニメでは例えば香にアプローチするイケメンが現れようものなら、獠が「お前のような男女を女扱いする悪趣味な男がいるのか」などと小学生男子のごとく香をめちゃくちゃにからかいながら内心放っておくことができず香をこっそり尾行する(わかりやすい証拠も出てくる)といったベタベタで微笑ましいやり取りが展開されますが、今作の獠はなんか単純に『素っ気ない』だけで第三者が見たら余所余所しいとか倦怠期といった印象を抱きかねない位です。香が御国と何度も会っていっても「ふーんそうなんだ」で終わり。わかりやすいからこそ応援したくなるベタな純情ツンデレキャラから「わかりやすさ」と「デレ」が完全消去されちゃって仮面夫婦的な間柄にしか見えないんだけど、そこに違和感を持つ観客は少なそうだったから多くにとっても獠×香のラブな関係性は優先度低いのかしら。

 

 だから本来なら意地っ張りな両思いの二人を察して後押しするキューピットポジションの依頼人が何処からか電波を受信して勝手に二人が恋仲だと思いこむエスパーにしか見えず、彼女のおせっかいは残念ながらひたすら白々しい印象ばかりです。「余計な事すんなよ。ほら、冴羽さんだって露骨に嫌そうにしてんじゃん。二人は同じ職場なだけで無関係なんだよ」と忠告したくなってしまう程。

 

 日常・非日常込みの息の合ったコンビ行動や夫婦漫才が本作の目玉の一つだったはずですが、目線も合わず会話も少なく(掛け合いというより、2人がそれぞれ独り言を言っているのが会話風に見えるだけのような場面も多し)獠と香が終始別行動ばかりだったのも気になります。二人が一緒に居たのは御国との顔合わせみたいな必要最低限の局面だけで、四六時中御国に呼び出されていた訳でもあるまいし他に仕事を抱えていた描写もないのに香がほとんど出てこず影が薄いことこの上なし。おさらいとしてTVシリーズを見直していた私にとっては「一体何があったんだお前ら、特にリョウ!?」というほどの異変です。

 

 その違和感はクライマックスの御国VS獠の対峙で最大になります。

 

 原作の冴羽獠という人間は軟派に見えても常に死と隣合わせの裏の世界の住人であり、香の自分への気持ちを察していながら彼女を裏の世界に引き込んだ事に消えない罪悪感を抱いています。「香を自分の手元に置いておくべきか。それとも表の世界に帰して人並みの幸せを求めさせるべきか」と親友の槇村が死んで以降考えない日は無かったと吐露している程、香を心底愛しています。その葛藤で香に気になる自分以外の男性が現れたときは毎度強烈な寂しさに後ろ髪を引かれながらも自ら身を引こうとして、時にその男が香を守れるようになるために銃のコーチをしていた程でした。

 

 ところが今作は御国が香を恋愛対象としてアプローチしていると知りながら、それに対するリアクションは無そのものでした。香の幸せのため表に出さないようにしているかと言えばそうではありません。なぜなら獠は御国登場時から彼の秘書がプロの殺し屋である事、御国自身もカタギではないと早々に看破しています。「香の幸せのため」というなら、みすみす接触を許したら香に危害が及びかねない。だったら香に嫌われる事覚悟で御国に気を許すなと忠告するか、依頼人を警護しながらも香を陰ながら追跡して護るか。私の知る彼ならその二択のどちらかを選択しています。でも完全放置で終始別行動。これまでの香がらみの獠の定番行動パターンは「一見放置しているように見せて、実は影から気にかけて見守っている」というものでしたが、影から動いてる痕跡もゼロです。

 

 そしてラストで御国は明確な恋愛対象としてのアプローチをかけていた香を裏切り、人質に取ったり殺そうとしたりしますが、私の知るこれまでのシティーハンターだったなら、香の気持ちを弄んで裏切り傷つけた男に対して獠は香のために男として隠せない怒りを吐き出し多くの読者をキュンキュン憧れさせてきました。だけどやっぱり完全スルー。

 

 極めつけが御国に向けた最後の説教で「お前の失敗はただ一つ。おれの依頼人を苦しめたことさ」とキメるのですが、そこは依頼人と同じく散々気持ちを弄ばれて裏切られ殺されかけた香もフォローしてやれよ! 眼の前に本人おるんやぞ! 香も香で淡白すぎて渦中のヒロイン感を全く感じさせてくれない。

 

 「獠の狙撃コースを確保するために打ち合わせなく最善のタイミングで避ける」という芸当を見せてくれますが、原作でそれをやった時はタイミングを判断する根拠がありました(道路脇に大きな看板がある→獠ならその看板に車を突っ込ませて車中の自分達をケガさせずに止めるだろう→そうなると角度的にタイミングはここしかない→避ける)。しかし、本作は根拠ゼロなので説得力がありません。二人が言い争った後で香が撃たれようとする瞬間を阻止したシーンですが、20メートル程離れた後方にいる獠にそれが正確に聞き取れたとは思えませんし。これまでずっと気まずく素っ気なくコンビ行動もろくになかったのに、そこだけで2人が他の誰も入り込めないラブラブパートナー同士だと思うには根拠が弱すぎて電波だよ、アイちゃん。

 

 特定のガンアクションや時流が許さない何かをカットするならわかりますし、それはむしろ柔軟なプロ意識として肯定します。

  しかし、作品の柱の一つであった獠と香の関係性が淡白で白々しく恋愛ぽい状況ゆえに強烈な違和感があり、まるで仮面夫婦のようになってしまっているのは、尺の事情でも内外からの要求やアドバイスでもないはず。なのにどうしてこうなった。まるで『エンジェル・ハート』世界の北条司先生の描く獠と香の違和感のあるぎこちない関係性が『劇場版シティーハンター』にも持ち越されてしまったかのように感じてしまうのは私だけでしょうか。

 

  そんな風に思いつつも、面倒くさい古参ファンなので、近所の劇場ではあと数日で上映終了してしまうので、それまでにもう一回見に行くつもりです。はい。