歩き回る虎

なんだかんだ10年近くはてなを愛用する村人です。アニメや漫画やゲーム等のオタク系レビュー、投資日記、世の中のこと、ツイッターで書ききれないこと等を書き連ねる雑記ブログです。

アニメや漫画を見て思ったこと、ツイッターで書ききれないこと等を書く雑記ブログ。




【レビューと考察】映画『プロメア』はオタクによるオタクのためのオタクの欲望全肯定アニメでした


映画『プロメア』ロングPV 制作:TRIGGER  5月24日〈金〉全国公開

 

  昨日、観に行ってきました。

 

 まず、私はグレンラガンキルラキルも全話見ていたので大変楽しく本編を鑑賞できました。一見「勢い任せの最先端熱血オシャレアニメ」でありながらも実は隅々までに「(ポリコレ時代に逆行するような)古風なオタク男性原理を肯定するメタな演出意図」が張り巡らされているのがトリガーの特色だと思います。グレンラガンキルラキルがそうであったように。

 

 今作『プロメア』もその例に漏れずオタク男性肯定のギミックが確実に含まれていると思われます。

 

 表向きのテーマはさしずめ「欲望のエネルギー(炎生命体プロメア)を抑圧しようとするとかえって諍いや負の惨事を招く。唯一の平和的な解は欲望を燃やし尽くして完全燃焼させることだ」でしょう。(続く)

 

 

 冒頭でプロメアとバーニッシュが世界を炎上させる災いとして脅威とされ、差別される様を描いていますが、この作品はプロメア、すなわち人々の欲望の炎を肯定しています。

 

 その証拠に主人公のガロは火消しを名乗ってはいるけれど、実際消火活動はしていません(モチーフになってる江戸の火消しと同じ)。

 

 ガロの役目は「炎を消さず煽らず、余計な場所に燃え移って炎上被害を出さないようサポートしながら、炎が自ら燃え尽きる最後までそばで見守る事」です。

 

 実質的には炎に対する深い愛情がなければ務まらない温かい理解者ポジションです。火元に放水する現代の消防士ではなく纏を振り回しながら見得を切る火消しをモチーフにしたのは、世間の迫害や圧力から炎を守りたい制作陣による意図的な演出でしょう。

 

 ちなみにプロメア=欲望というくだりについては、後半、バーニッシュを迫害してのし上がった成功者であるラスボス、クレイ・フォーサイトは自身もバーニッシュであった事が判明しますが、彼がはっきりとバーニッシュの炎上衝動の事を「抑えるべき忌まわしい欲望」だと明言しています。バーニッシュのテロリーダー・リオに対しても「お前は衝動のまま燃やすだけなので力が不完全だ。自分は完璧にソレを制御できている」と圧倒的力であしらいます。

 

 プロメアは独立した生命体で、リオ達は「燃えたいと望むプロメアの声にしたがって周囲を燃やす事が使命である」と言いました。通常のバーニッシュの気質は穏やかで、物言わぬ炎くんを代弁しタッグを組む共存者でしたが激高すると己自身の衝動と一緒になって炎の勢力は手を付けられないほど膨れ上がります。そしてその暴走を抑えるのが主人公ガロ達です。

 

 そこまでを踏まえてトリガー特有のオタク肯定文脈でもう少し掘るなら、

 

=====================================

 

 プロメア=一次的なオタクコンテンツ

 

 バーニッシュ=オタクコンテンツを糧に生きるオタク

 

 普通の人間=オタクを拒否する迫害者

 

 マッドバーニッシュ=ネットで炎上する・他人を炎上させる濃厚キモオタ

 

 ガロ=一般人ながらキモオタを含むオタク達に通じる熱量を持ち、オタクに理解を示すヒーロー

 

=====================================

 

 ……というメタファー付けが考えられます。つまり、オタクとオタクに理解がある一般人が手を取る、オタクが夢見る幸せな優しい世界のお話だった?

 

 特にイキるマッドバーニッシュ親玉の中身が主張の激しさとは裏腹に中性的でこどもっぽい人だったり、マッドバーニッシュが炎を糧にかっちょいいパワードスーツを創造したり(つまりオタクの二次創作)。符号するところは多々見られます。

 

 また、結局ガロだけがバーニッシュと和解を遂げて、主要メンバーを除く普通の人間達は作品的絶対悪のまま投げっぱなしで終わる雑さも、まあ内向的なオタク目線だなぁと。。例えばほかの熱血を売りにする作家なら、ガロの熱い呼びかけで一般民衆も目を覚ましガロ&リオコンビに声援したり助け合ったりするシーンが挿入されてもおかしくなかったと思うけど、制作陣はそこまで非オタクを信じられなかったんでしょう。松山ケンイチさんや早乙女太一さんのような芸能人キャスト起用の結果、一般人寄りの観客はそれなりに多いと見込まれるなか、トリガーの「一般人=オタクを迫害する頭の硬い悪い奴」というメタファーは何を想って示されたものなのか。まぁ、一般人はソレ以前にアクの強すぎる本作で早々に振り落とされてると思うけど。