歩き回る虎

なんだかんだ10年近くはてなを愛用する村人です。アニメや漫画やゲーム等のオタク系レビュー、投資日記、世の中のこと、ツイッターで書ききれないこと等を書き連ねる雑記ブログです。

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「元社長65歳の上級男性未経験ド新人保育士という特例待遇者が辞めた話」で一般的な保育園問題を考えちゃダメという話

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エリート一族の会社社長が定年後の道楽でコケちゃった話を医師息子が被害者風に拡散

 

 

                                父親の活躍に心酔する息子の猛烈な自慢、からの↓

 

 

 これが爆発的にバズって驚愕の10万いいね超え! 受け手の多くが鵜呑みにして同情と共感の嵐が巻き起こったのが本日。元々、マスコミでたびたび報道される「男性保育士が保護者から偏見を持たれたりして辞める事件」のイメージに重なって、この老齢男性にも嵐のような同情と「女の職場イジメ差別コワイ論」が飛び交う事態になりました。私にも同い年の友人が保育士で人間関係のめんどくささは話に聞きますので確かにいじめは起こり得る話だろ思います。

 

 が、結論から言って「保育士現場は男性保育士が女性に迫害されやすい男性差別の温床だ」という風潮に付け込んで、息子氏が都合の悪い何かを隠した虚偽のツイートである可能性が極めて高いと見ています。

 

 冷静に見ればツッコミどころしかないツイートのおかしな部分を、以下で一つ一つツッコんでいきます。

 

 

  1. いくら人手不足の保育士業界でも、65歳定年退職後のド新人未経験老年男性応募者という超特殊なケースでは職員採用される事は現実的に極めて困難。保育園自体60歳~65歳で定年を設けている例(その高齢枠も即戦力の経験者や育児ベテラン親を招き入れる為だが非正規扱い)がほとんどなのだから天下り感覚の65歳家事育児未経験プライドクソデカ上流階級お爺さんド素人保育士応募者の存在は保育園にとってはありがた迷惑。使い物にならず新人としても指導しにくいのは火を見るより明らかだから門前払い不可避で就活だけでも相当な長期戦になると思われる。にも関わらず求職期間なしであっさり即就職してる事から、無理を権力で押し通した実質お客様待遇のコネ採用の可能性がかなり高い。例えば地位の高い小児科医の息子の息のかかった保育園等。

  2. だとしたら「自称女どもにいじめられて辞めさせられたエリート一家の頂点に君臨するお爺さん見習い保育士」は一番経歴の浅い新入りながらその職場において特例に守られた権力者であり、余程の大義名分なしの解雇は非常に難しくなる。ここで息子の自己申告の全ての信憑性が根底からひっくり返る。たとえば自然な退職理由として試用期間切れと同時に本人が飽きたとか。

  3.  ツイートから伺う限り、親父氏とその息子は己の社会的偉さに見合った天下国家問題への崇高な使命感(待機児童解消)に自己陶酔するばかりで、自分の年齢の半分にも満たない一般の女性保育士達を職務を同じくする仲間と認識していたとは到底思い難い。「先輩」として敬意を払っている風にも思えない。

    彼のような心性なら年若い先輩女性が年若い先輩女性であるというだけで「偉い、年長の、男性」として耐えられない屈辱に襲われる事請け合いで、周囲にもストレスと不快を振りまくだろう。そりゃそんな厄介な新入りが入ってきたら当然トラブルになりますわ。

  4. ていうかいくらなんでも「おじさんだから解雇」が法的に通用するはずがないだろ! 仮にもしそう言われたとしたら、プライドの高いエリート富裕層経営者一家の父・息子らが性差別だ不当解雇だと反撃する様子もなく、露骨に見下している保育園現場と女性の通告を飲んですごすご引き下がるとは思えない。『元社長65歳が短期間で保育園を退職した』の一点だけは事実として、退職理由には表立って言えない後ろめたい事実があるのでは? 父親に心酔して父親の偉さを自分の偉さのようにネットで大自慢する息子にとっては。

  5. 性別や職業に関係なく人間関係の不和はどんな場所でもあり得る訳で。ましてや超特殊な採用例にして女性の先輩を先輩とは思わないプライド激高65歳元社長爺さんが新人としてやってきたなら尚更。にも関わらず息子は「保育士不足問題」に事を無理矢理すり替えて相手個人ではなくひたすらその女性性を強調して「“女性”保育士が愚かだから日本の母子の問題が解決しないのだ」と天下国家論に繋げて糾弾。もうね。仕事もろくに覚えきれてない勤務数ヶ月の未経験ド素人新人が己が辞めた事をさも日本の重大な社会的損失の如く嘆いて女性に責任転嫁してるけど一体何様のつもりなのか、園長サイドから見れば、ベテランの女性保育士達の仕事パフォーマンスを、一人の使えない厄介勘違い新入り爺さんのために激減させたくないからプライドだけは高い素人さんにやんわりこの仕事は不向きと伝えたのではないか?(だとしたらそれは大変勇気ある英断)。そんな選民意識丸出しだから職場の女性皆に疎まれたんだろ?

  6. そこに性差別があるとしたら、未経験の新入りという自覚が1ミリたりと無くこんな他責的で虚偽臭くて無責任で支離滅裂な自己申告を平然と行える「女性と女性主体の職場」への見下しなんじゃないでしょうか。私のTLでは「職場いじめで自己都合退職を迫られた」という経験を持つ人が何名かおりそれは理解できるのですが、息子氏は具体的に何があったのかを一切隠してボカして語らないまま現場の女性保育士を先輩として敬意を払う様子もなく愚かと詰って短期逃走バイトの親父様を英雄視するその様は明らかに私の知る「職場いじめ報告例」とは一線を画してる。

 

 総じて、親父氏と息子氏のアンテナがことごとくリアル育児と似て非なる政治家目線の「天下国家の大問題」のみで(例、少子化対策、待機児童解消、保育士不足など)、リアルの女・子供の実存や現場目線の育児ノウハウや共同生活にはまるで無関心な辺り、ベタで解りやすい『昭和気質の保守エリート男』だと思います。「男の領分は天下国家!天下国家を語ればエライ!生活なんぞは男の仕事ではないので、社会を知らない頭悪い世話焼き女どもに任せておけ!」という価値観で、老齢の男性知識人にこのタイプが多い。けど、若いネットライトウイングな男性にもやっぱり多い。

 

 『現場引退後も篤志家として死ぬまで讃えられたいから“次世代の子供のため、セレブなのに敢えて月収10万以下の保育士に従事する”という美談を描いた。非力な女に務まる仕事だ。老齢でも男の自分なら充分務まるはずだし、子供好きな優しい男はモテるから保育士の小娘達からのチヤホヤも期待できる。ちょっと現場を経験して保育園経営者になるのもいい。という訳で特別枠で強引に割り込んだはいいが飽きた。ワシの偉さを理解できない無礼な小娘共のしつけが足りないぞと園長にクレームを入れてるのに、園長も歳下で女のくせに注意してきてケシカラン。もうすぐ試用期間終了だが、このままでは不採用になるかもしれぬ。困った。ハクを付けたいのに気分的にもう続きそうにない。しかし、息子を通して老後の計画を触れ回った手前後戻りも格好悪い。ううむ…………そうだ!“高齢男性だから退職させられた男性差別”シナリオ採用ッ! 偉い男に敬意を払わぬ歳下女園長め、ただでは済まさぬぞッ!』

 

 ↑……大方、エリート父親を美化するための息子氏のフィルターを除けばこんなところじゃないでしょうか? 例のツイートを最初に見た時は、定年退職後の65歳て傍目にはどう見ても「お爺さん」だろうに喩え大げさに被害者ぶる話であっても絶対にお爺さん扱いされたくないからほのかな若さを主張するプライドと見栄が垣間見えて微笑ましいような呆れるような印象も抱きました。息子のアカウントの発言ではありますが、もしかしたらこういう細部の言い回しに「パパチェック」が入ってるのかもしれません。

 

 ここに書いた事はあくまで状況を加味した推測ですが、当該親父殿と息子が決して我々の感覚で一般化できない異質な特例採用例であること、その割に僅か数ヶ月であっさり退職したこと、特に退職描写において息子が親父殿の名誉のために親父殿の後ろめたい何かを隠蔽しているであろうことは確かでしょう。

 

 冒頭にも書いたとおりですが、保育園現場に「男性保育士が保護者や女性職員から偏見で排除される」という風潮があるのは事実で、マスコミ受けが良いのか「男性保育士が何らかの理由で退職したエピソード」は母数が少なく見つかりにくいだろうに目ざとく発見されてすぐに新聞やTVのワイドショーで男性差別文脈で報道されます。歴史的に彼よりも激しいクレームに長年さらされてきた女性保育士の苦労話にはほぼ焦点があたりませんが。きっと「女がナマ抜かすなら俺達男はもう下に手を差し伸べてやらないぞ!」という上からの論理展開で女性差別ゆえ放置されてきた「女性の労働現場」をそのまま温存するのを後押しする世論誘導に都合が良いからだと思います。

 

 たとえば「男性保育士はロリコンが多いという偏見でなじられて保育士になった事を後悔したり退職する男性」がワイドショーで大々的に報じられたとしても、僅か1・2歳差しかなく同じ位女児性的虐待率が多い小学校低学年男性教師に同じ目線が向けられる事はありません。あったとしてもニュースにもならないし、男性教師が大仰に「教師を辞めたくなる程の男性差別のショック」を嘆くこともありません。何故かと言うと教師業は保育士とは比較にならない程社会的な偉さと給与が上で、国民皆がそれを承認しているからです。

 

 「男性保育士が男性差別にあう!もう辞める!」みたいな被害者ムーブメントの背景には実は「保育士なんか本来下々の女の担当で上位の男がするような仕事ではないのに奇特にも敢えて下に降りてきて手伝ってやってる有り難さと感謝を忘れてんじゃないだろうな!?」という恩着せがましい女性差別的価値観が潜んでいるように思います。本記事で取り上げたツイートが特に露骨な好例です。

 

 冒頭のツイートの投稿主は「社会的地位の高い家柄に生まれ、小児科医界隈の中でも相当高位と思われる大層な肩書をたくさん並べて、職業柄母親と子供の味方で母子のために社会貢献します」とプロフィールに書いた男性でした。たぶん65歳親父殿とは絵に描いたような似たもの親子なのでしょう。かようにエリート意識から社会貢献を是とする育児女性の味方ヅラした偉い偉い男性が不都合なナニカを覆い隠すために、あっさりと「女と女の職場」に対する古典的な差別言説を利用するところに欺瞞を感じましたし、ただでさえ違和感を抱く事が多い「男性保育士が男性差別にあう!もう辞めたる!」言説において超特殊な設定を隠そうともせず誇示しているので違和感が限界突破したというのがあります。

 

 経営者なら「僕は続ける気まんまんでお母さんからもいきなり子供好きを評価されて愛されてたけど、おっさんだからという理由だけで解雇されたんだお!ちなみに元社長65歳で定年退職後に天下国家のために保育士になったった超エリートだからそこらの保育士とは格が違うお」という理由がいかに無理があるか。もうイジメ云々の描写を差っ引いても特別な選民意識がダダ漏れに漏れてるではないか。深く勘ぐるまでもなく、父親&息子がどれだけ庶民離れした感覚のわがままでプライド高い人種なのか容易に読み取れそうなもんなのに驚愕の10万いいね超えで大同情・女叩き祭りですよ。

 

 そりゃあとりあえず「女は男をいじめる性悪で邪悪で愚かないきものだ」とヘイトを向ければ、どんだけ背景が嘘臭く設定ガバガバでも声の大きなネット民達は嬉々として自ら騙されて同調してくれるのが常ですが、設定作りで慎重になるどころかパパ上様への賞賛しか想定してないような無邪気さで子供だましの内容を放流した結果、苦もなく悲劇の男性然と各所でビタイチ疑われずまとめられて10万RTいいねになるとか、どんだけだよと脱力した次第です。