歩き回る虎

なんだかんだ10年近くはてなを愛用する村人です。アニメや漫画やゲーム等のオタク系レビュー、投資日記、世の中のこと、ツイッターで書ききれないこと等を書き連ねる雑記ブログです。

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【レビュー】PS4『新サクラ大戦』、100点満点中20点  「世代交代」をはき違えたシナリオライターの悪意と歴代再改悪システム

新サクラ大戦 クソゲー レビュー イシイジロウ 

 

   新年早々こんな酷評ですみません。サクラ大戦に青春を捧げたサクラ厨の愚痴によければお付き合いください。

 

 私はサターンの初代『サクラ大戦』直撃世代でドハマリして以降スピンオフ以外の全シリーズを購入しグランドフィナーレ(全ヒロインクリア)を飾ってきました。ミュージカルを食わず嫌いしていた私に初めて舞台歌劇の素晴らしさを教えてくれたのもサクラ大戦で、歌謡ショウにも何度も行きましたし、熱が高じてラチェット・アルタイル役を演じた有名舞台女優・久野綾希子さんの単独ミュージカルも観に行った程です。池袋のサクラカフェは閉店の瞬間を見届けるまで通い続けました。初めて出した二次創作同人誌もサクラ大戦でした。とにかく私にとってのサクラ大戦は青春を共にした鮮烈で伝説的でただのゲームに留まらない特別なコンテンツでした。

 

 

 そんな素敵な青春として胸に眠り続けていた『サクラ大戦』にまさかの完全新作シリーズが出ると聞いた時、どれだけ嬉しかったことか! 田中公平先生以外スタッフ総入れ替えという報道に一抹の不安は覚えましたが、広井王子さんとあかほりさとるさんの示したサクラ大戦の核は単純明快で熱いもの。シリーズを1から5まで1回でも普通にさらえば余程アレでない限り伝わって当たり前(形にできるかどうかはともかく)だと思っていました。

 

 「つまりアンチじゃなくて、作品愛故の苦言なんだよ」アピールの前置きはここまでして、作品のレビューに移ります。

 

※ネタバレ含みますので注意※

 

PS4『新サクラ大戦』、100点満点中20点

 

ダメだった所

 

●隊員個別ミニゲーム&「帝劇の長い一日」が無い!!

 

 もしこの事実が発売前に流れていたら半数以上のサクラファンが購入を見送るのではないでしょうか。それだけ致命的な欠陥です。

必須と言うまでもない、本来あって当然の要素が無い。同じくミニゲームをカットしたPS2サクラ大戦V』もファンから盛大に叩かれていたのにまるで学習していない。3DCGやアクションにリソースを割く位ならミニゲームに使えよ。セガ広報陣が発売までこの事を意図的に隠し通してきたのは疑いようもなく、ユーザーを騙して売り逃げを狙ったようで非常に悪印象です。

 

曲がりなりにも恋愛ADVなのに本編のイベントイラストや音楽、個別エンディング含むムービー鑑賞モードが無いのはもはや狂気の沙汰。ミニゲームを省いた『V』でさえ当然搭載してました。全戦闘を記録していつでもプレイできる「いくさちゃん」なんかよりもCGとサントラモードだろ何考えてんだ! おそらく『龍が如く』と同じ感覚・同じUIを引きずった結果、コロっと忘れてしまったのでしょう。名越さんは新サクラを監修する前に一度でもいいから『サクラ大戦』と世の恋愛ADVゲームをプレイしてください。

 

●戦闘時における「かばう」廃止、隊員間の連携攻撃も廃止、全隊員同時出撃廃止、合体攻撃弱体化

 

 無双の劣化コピーみたいなアクションにロックオンつけろとか細かい注文はありません。仮に改善しても再びやる気はないので。それよりシミュレーション戦闘から実質単騎出撃(その話のメインヒロイン含む最大三機体をボタンを切り替えて操作する)の無双に変更してしまった事で、かばうが廃止されてしまったのは寂しすぎる。組み合わせ次第で多数の掛け合いセリフが聞ける連携攻撃も地味に楽しみだったのに。合体攻撃も一定期間無敵になるだけで使えば局面を一挙逆転させられる奥の手感が一気に薄まった。

 

結論:シミュレーション戦闘に戻して!

 

●シナリオがいくらなんでもひどすぎる。キャラクター同士の絡み描写も下手。

 

 四話の忍者あざみ回は唯一マシ。それ以外は全滅。お話もおかしいし、ヒロイン達もまるで魅力的に見えません。

 

 「劇団という世を忍ぶ仮の姿で、帝都の悪を討つ帝国華撃団」という世界観を踏襲しての補足設定紹介と主要人物顔見せに徹する性質上無難以外になりにくい天丼チュートリアル的な一話目から人物描写の致命的ダメさを晒せるのは逆にスゴイです!

 

以下、一話の具体的な流れ

 

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 さくら、戦闘時に「絶対に何があってもあきらめない」を連呼

  ↓

 機体が間に合わないという説明でお留守番の主人公が誰にも聞かれてないのに突然説明的に過去を詳細に語りだして絶叫

「俺は艦隊を任されてたのに降魔に襲われて艦を犠牲にして退却した!だがさくらを見てわかったんだ!俺にはもっとベストを尽くせたはずなんだ!あきらめない心が大事なんだ!なんで俺に光武が無いんだよおおおおお!!」

  ↓

 すみれ支配人「その言葉を待ってましたわ!主人公君の為に作らせた最新光武をあげる(交戦中やぞ? 嘘ついて隊長を待機させて隊員を危険に晒してまで悠長に心意気を試しとる場合か!)」

   ↓

 主人公、さくらと合流するもライバル勢力の上海華撃団が現れる。そのまま共闘かと思いきや、なぜか「帝都の平和を守るのは俺達だ!雑魚が夢見ていきがるな!」と怒鳴られ上海側の隊長が連戦で弱っていたさくらをボコボコに攻撃する(依然たくさん居る敵はそっちのけ)

   ↓

 なんかかんやあって敵を撃退するも、さくらを暴行した上海華撃団が謝罪もフォローもなく「明るく良い仲間」ポジションで普通に主人公達と肩を並べてる

 

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  ちょっとこのサイコな展開のどこに燃えを感じていいのかわからないです(マジ困惑)

 

 また恋愛含めたアドベンチャーパートの描写もひどい。

 メインヒロインのさくら⇔主人公の関係性を特別にしすぎて残りは雑、あまりにおざなりなおまけ状態です。

 

 複数ヒロインルートのADVなので当然なのですが、これまでのサクラ大戦シリーズは主人公のパートナー枠に全キャラクター平等に入り込める余地が考慮されていました。旧来の主人公・大神一郎がある種の敬意を込めて「13股ヒーロー」と呼称されている程にヒロイン全てに可能性があり、全てのヒロインに全力投球できる偉大なハーレムゲームの主人公の格がありました。(純愛派ユーザーでも大神さんなら13股、なんなら男性も含む全キャラクターを籠絡しても許せると思わせる特別なカリスマ性があるんです!)

 

 しかし、今作は制作陣の理解力不足でサクラのきれいな熱血ハーレムADVという側面を捉えられなかったせいか、メインヒロイン・天宮さくらに「子供の頃に婚約を交わした幼馴染同士」という何ぴとも入り込む余地のない禁断の設定を本編で付加してしまいます。つまりプレイヤーにとっては自分が主人公・神山誠十郎なら天宮さくらを選ぶ事が唯一無二の「正解」であるとゲーム制作側に明示されてしまっているのです。これではさくら以外のキャラルートへの興が醒めて多かれ少なかれどうしても没入できなくなる。一本道のゲームならともかく、複数ヒロインルートを周回させる前提のADVでは絶対にやってはいけない愚行です。

 

 そのせいで自分でも信じられないのですが、サクラ大戦関係で初めて周回する気が起きず、1回クリアしただけで放置してしまっています。まだ見てないルートの強制スキップ禁止システムのせいで、ヒロイン分岐話のセーブからクリア後やり直そうとしても「スキップできません」になるから不親切この上ない。マルチエンドを作っておきながらまるで「周回するな」と言わんばかりです。これも名越監督が『龍が如く』の方法論を何も考えずにサクラ大戦に当てはめてしまったが故の破綻なのでしょうか。

 

 あとサクラ大戦の続編を大々的に謳って古参を釣りながら、サクラ大戦の世界観をほぼほぼ理解していないのがわかる物語展開のオンパレードで本当にキリがない。

 

   例えば元々帝都随一の歌劇団だった帝国歌劇団が見る影もなく落ちぶれ、ド下手くそな棒読みの素人学芸会しか出来ないため食費もままならない資金難に陥る→外部から演劇指導ができる女優をスカウトしなきゃというストーリーですが、いやトップスタァ神崎すみれさんが指導すればええやろ!! 第一、帝劇一プロ意識の高い女優だった彼女が素人の拙い学芸会を客に晒す判断をするはずがない。と言った具合に。

 

 キャラクター同士の掛け合い描写もハッキリ言って下手。

 1話の流れでお察しでしょうが、本編で行間の描写を重ねて積み上げるべきキャラクターのバックボーンを、キャラ自らのセリフで1から10まで全て説明させてしまうというプロの脚本家としてあり得ない暴挙を連発しています。それまでろくに絡みが描かれなかったキャラ同士が途中から「自分とあいつは親友同士」とセリフで連呼してアピり出す、価値観の違う者同士の衝突が描けずどいつもこいつも根っこは没個性で動かされている感じがしてしまう。天宮さくらを取り巻く関係性以外は無なので自称さくらの親友キャラ以外はひたすら空虚。

 

  ラブコメもファンタジーも熱血もシリアスもいける器用な万能ヒットメーカーあかほりさとるさんの抜けた穴と偉大さを1話ごとに痛感する内容でした。作品の根底に流れる遺伝子の理解度という意味では、作曲家の田中公平先生にシナリオを書いて頂いた方がまだマシになってたまであります。

 

 あかほりさんである必要はありませんが、シナリオの人選は「恋愛コメディと熱い戦いの両方に長けた実績の高い有名ライター」が最低条件であるべきです。現にキャラデザでは藤島康介先生の後釜に知名度インパクト抜群の久保帯人先生を起用していたのですから、セガもスタッフの知名度と実績アピールがいかに大事か心得ていたはず。

 

 虚淵玄さんほかニトロプラス作家陣を始めとしたエロゲー界隈や『シンフォギア金子彰史氏など、いくらでも相応しい人材は居ただろうに、何故、言葉は悪いけどシナリオライターとしては素人同然のイシイジロウ氏と鈴木貴昭氏に脚本をブン投げてしまったのでしょうか。イシイジロウさんはプロデューサーとしては有能で実績のある方ですが、ストーリー構成においてはレベルファイブ日野さんの半分の実績もありません。鈴木貴昭氏はどちらかと言うとミリ萌えアニメのミリ知識監修屋さんであってシナリオライティングはほぼ初めてと言っていい。明らかに人選ミスです。

 

サクラ大戦に欠かせない主題の舞台要素が驚くほど軽くどうでもいい扱い

 

 大衆演劇ガチ勢の広井王子さんの演劇哲学と心意気をどんな形で受け継いだかと思えば、1話の「桃太郎(!?)」と2話の「ダナンの愛」以降、本編で演目を扱う事を完全に放棄してしまう展開になるとはまさか予想だにしませんでした。ラストのアニメムービーでは太正時代なのにアイドルステージで観客がサイリウムを振るライブ。もう世界観無茶苦茶。サクラ大戦の原型留めてない。

 

 名越さんやイシイジロウは最初から素直に「僕たちはラブライブ世代のドル声優オタだから大衆演劇の魅力を現代に伝えようて意志なんかありまっしぇーんwwwサクラの伝統?広井王子のやり方?んなもんいらねwwwww」と言いなさい。いっそ演劇嫌いのチャラいイシイ支配人(仮)が出てきて大帝国劇場をライブハウスに改装してしまう位の方がまだ嫌味がなくていい。

 

●続編としての前作リスペクトが皆無どころか悪意すらある。「世代交代」の意味を完全にはき違えたシナリオライターの自己顕示欲。

 

 『街』→『428』での原作不理解劣化コピーとほぼ同じ。イシイジロウの名を聞いて懸念していた事が現実となってしまいました。

 

 セガサターンの傑作サウンドノベル『街』は言わば脚本家・長坂秀佳氏の作家人生の集大成でした。第一線で刑事ドラマ脚本を書き続け、オタク向けの特撮も書き続け、放送作家として俗なエンタメTV番組の脚本のかたわらで純文学小説も執筆し老若男女の人生と向き合い続けた。そんな長坂氏が思い入れの深い渋谷を舞台に、街に生きる各主人公の物語にそれぞれに自分の生きた軌跡を投影して、自身のTVドラマ人脈を総動員して臨んだのが『街』という奇蹟の大作です。8人の主人公の物語、舞台、全ての要素に長坂秀佳が生きた証が濃厚に反映されているのです。

 

 

 ところがイシイジロウ氏の指揮した『428』は総じて『街』が苦心して生み出した革新的システムを上辺だけなぞっただけで元作者への理解とリスペクトがなく、普通に企画を通したらボツをくらう自己満足妄想を『街』の続編という舞台を利用して無理矢理混入させたようなアマチュアの原作冒涜になり下がっていました。

 

 そして『新サクラ大戦』においても「お前のやりたい妄想話、オリジナルだと絶対ボツにされるから『サクラ大戦』のカンバンを利用して世に出したかっただけでしょう? 最初から他でやりなよ」になっていたのです。

 

 象徴的なのは「帝国、巴里、紐育が総力戦で新たな降魔と戦うも生贄作戦の犠牲となり、すみれ以外の全隊員が生きたまま別次元の帝都に封印され続けている」という旧作ファンの祈りを踏み潰す救いのないグロテスクな設定、そしてやはり、天宮さくらの成長装置のためだけに生み出されて殺された偽真宮寺さくらこと夜叉の存在です。

 

 黒ずくめで謎の仮面を装着し、真宮寺さくらと同じ武器・同じ必殺技を使う「夜叉」は「真宮寺さくらを妄信的に憧れ同一存在を目指す天宮さくらの心の闇」のメタファーです。更にメタ視線で見れば新サクラ制作スタッフがそれぞれに「夜叉=旧来サクラファンからの重圧そのもの」「天宮さくら=自分達」を投影しています。

 

 憧れの真宮寺さくらに近づく夢を原動力にして猪突猛進していた天宮さくらは「夜叉」の存在によって自身の目標を疑い、別人のように鬱屈して追い詰められてあらゆる物事から逃避します。しかし主人公らに鼓舞されて夜叉=先人みたいにならなければという心の闇と向き合い、過去の真宮寺さくらの役回りを自分自身で上書きした後、真宮寺さくらを生き写した夜叉を一刀のもとにブッ殺す通過儀礼を経て「真宮寺さくらを目指さなければならない」という呪縛を断ち切り自分自身を取り戻すという決着です。

 

 そりゃあ偉大な旧作スタッフや関係者達からのプレッシャーにヒィヒィ言ってたあんたら新メインスタッフはさぞスカっとして気持ちいいでしょうよ。自分達の願望をそのまま具現化したような爽快な絵面でしょうよ。

 

 でも真宮寺さくらの形をした影を無残に斬り殺して「私は私だこれでいいんだ」と悟る新サクラヒロインという強烈なビジュアルを見せつけられたサクラ大戦ファンは、真宮寺さくらファンはどんな気持ちがするか、一瞬でも想像しましたか?と胸ぐらを掴んで問い詰めたい気分です。

 

 すみれ以外の帝国・巴里・紐育隊員は結局異次元の偽帝都に封印されたまま救済もされていません。隊員を犠牲にしてラスボスを封じ込める作戦を作中でサラっと「もしかしたら非人道的な措置だったかな?」と主人公が軽ーーーーく一言自問するだけ。最終話で封印先の偽帝都が復活するくだりになり、全ユーザーが「帝国・巴里・紐育隊員との合流共闘」を期待したと思われますが残された救出しようともせず、ラスボスを自分達が倒そうともせず、また封印し直して「大団円」になってしまいます。単純に作劇として破綻していますし、もはや降魔退治はどうでもよい言い訳で真の目的は帝国・巴里・紐育隊員を封印し続ける事(それを平和のための犠牲だと開き直る事)と考えないと辻褄が合わない構成です。

 

 真宮寺さくらエリカ・フォンティーヌジェミニ・サンライズも、他の全てのヒロイン達はつまるところ生きる事も死ぬ事も許されず「続編を匂わせてカネを稼ぐため商業的都合で利用されるべく」セガスタッフ達から永久に異世界で飼い殺される。その図式がまさにセガサクラ大戦を取り巻くリアルそのものだったのではないかと思った次第です。

 

そりゃ横山智佐さんも富沢美智恵さんも出演オファー複数回断るはずだよ。。

 

●続編前提での臭わせと伏線回収放棄やめろ

 

師匠が黒幕とか諸々露骨であざとすぎて釣れんよ。ユーザーなめんな。

そんなやっつけ仕事の正当化戦略よりも、同人勢を惹き付けるような主人公とヒロインの魅力を掘り下げろよ。ギャルゲのギの字も知らないど素人のイシイジロウ氏と鈴木貴昭には無理な要求だけど。なんでライターをベテランギャルゲライターやハーレムラノベ作家から選出しなかったんだよ萌え×燃えの両方に長けた有名モノカキなんて今日びいくらでも居ただろうに。まだあかほりさん続投の方が良かったよ。

 

良かったところ

 

田中公平先生の安定した楽曲と藤林聖子さんの作詞。『スタァ誕生』最高。