ガイナが『トップをねらえ!』と『オネアミスの空』の続編(『蒼きウル』)の製作を正式に発表しました。しかし、『初代』『2』と大好きだった熱血百合大好物な私のテンションは「凪」そのもので、期待感や嬉しさよりもこんな棺桶に半分足を突っ込んでいた企画をこんなタイミングで出す辺りに、作品への意欲よりも経営的な大人の事情をいろいろ察せられてしまい悲しい気持ちにすらなってしまってる始末。
「あんなにキレイに終わったのに、どう続編を作るんだ!?」という疑問もあるし、前作・前前作監督の庵野秀明さんや鶴巻和哉さんほか多くの才能が退社・独立してしまった今のガイナじゃ、おそらく名前を見ただけでマニアのテンションが高まるようなメンツはもう集まらないでしょう。今年の夏に木下グループがガイナの親会社になったようですが、 この企画はアピール材料になるのかしら。それとも一部で言われている通り税金対策なのでしょうか。
『トップをねらえ!』シリーズは宇宙怪獣のデザインや緻密なSF的考証も大きな魅力に挙げられますが、個人的に最大の特色は「一見バカバカしくてナンセンスな事を、全登場人物が照れたり気取ったりせず本気の真剣で貫き通す世界観」だと思っています。ロボット搭乗特訓なのに何故か鉄下駄で走り込みをしたり、ロボットなのに必殺技がプロレスのようなイナズマキックだったり、主人公達のコーチが「というよくわかんないけどカッコいい檄を飛ばしたり、これらのわけわかんない事をドシリアスなムードで真剣にやってるから生まれるおかしみと怒涛の勢いがあるんですよ。普段はネガティブで斜に構えていて照れと体裁から前向きな発言を表に出せないオタクでも、この勢いの中でなら本当は心の奥底で信じてやまない熱血イズムに身を委ねられる。そういう抑圧からの解放を担ってるのが本作なんだと思います。で、私が思うにこの世に優れたロボットアニメ・SFアニメを作れる才能は数多あれど、真剣すぎて滑稽さすらある真剣さを照れずにまっすぐに表現できるか否かは相当に稀有な資質です。もうクリエイターのキャ 」ラクターとか人間性の領域になってきてしまうので。果たして旧ガイナックス在籍スタッフ以外のクリエイターにそれが出来るのか(例えば、SFも美少女間の熱い絆もロボットも硬派も怪獣もいける万能選手的な才能で時代の寵児になった脚本家のU氏でも、本作が求めるノリにはあまり合わないと思う)。せっかくの続編でも、照れや小賢しさを出して「真剣なバカ」を真剣にやれないなら『トップをねらえ!』シリーズである意味がない。せっかく世に出る事に相成った『3』においては、「とりあえず女の子のバディ同士で、ガイナ立ちさせて、宇宙怪獣をイナズマキックで撃退させて、熱血風味とSF要素を混ぜ込んで前作パロも入れとけばシリーズファンは喜ぶだろう」という安直な方向に行かない事を心から望みます。
なお、作画と話の展開は『トップをねらえ!』4話以降が最も神がかっていたと思いますが、百合厨的な視点だと『2』の方が全体的に美味しくて素敵でございました。(……もう正直に言うとね、初代『トップをねらえ!』の「少女達の媒介としての恋愛対象としてのカッコいい男ありき」の関係性が見ていて本ッ当に苦痛だった。一昔前までは一見主体的で気の強い戦闘少女主人公だけど行動原理は当然のように父親か恋愛対象の男のため、美少女キャラというのは実質男のための客体として造形されるのが男性向け・女性向けを問わず暗黙の了解的空気だったからなぁ。流れが変わったのは『スレイヤーズ』以降かな?よくわかんないけど。今は良い時代になったもんだ)熱血面などはともかくとして、ヘテロ異性愛を介在させない戦闘女性同士のガチな絆の関係性描写ならむしろ最近のアニメの流れにこそマッチしているので、そこだけは何の不安要素もなく構えていられます。
ひとまずはオカエリナサト。